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エッセイ

舞台劇「音にいのちあり〜鈴木鎮一 愛と教育の生涯〜」を見て
〜紿田俊哉副会長

 9月29日(日)、まつもと市民芸術館主ホールで開催の「鈴木鎮一生誕120周年記念 音にいのちあり ~鈴木鎮一 愛と教育の生涯~」を鑑賞することができました。松本市芸術文化祭60周年、鈴木鎮一先生生誕120周年、没後20周年を記念する特別公演でした。
 正に「深い感動をいただいた素晴らしい公演」でしたの一言につきます。まず、脚本・演出・総合プロデュース、また、ダブルキャストも演じられた美咲蘭様と、それを支えてこられた多くのスタッフの方々の長期にわたる大変なご尽力に頭の下がる思いと、心からの感謝の気持ちを持ちました。本当にありがたいことです。

見事な演奏だった伝田正秀さん 感動の場面は数多くありました。全体に流れる鈴木鎮一先生の深い人間愛に満ちたお考えの数々、私が何度も耳にし、今でも機会あるたびにふと弾いてしまう「名古屋の子守歌」。しかも、その演奏を私の幼馴染で、子どものころ大変かわいがってくださったお姉さま格の鈴木裕子さんによる素晴らしい演奏。そして、私が小学校5年生の時、研究科を卒業した直後から鎮一先生に直接レッスンをしていただいたメンデルスゾーンやブルッフのコンチェルト、それを今回、伝田正秀さんと、裕子さんのお嬢さんの石川咲子さんとの素晴らしい共演で聴くことができたこと、公演最後の子どもたちによる合奏演奏、とりわけヴィヴァルディのa-mollは音色・音楽表現・演奏姿すべてが最高!でした。

 ヴァイオリンの演奏とは別に、舞台に立たれた主役の皆様と、それを立派に支えておられ方々による演技、ソプラノ、合唱、ダンス、バレエ、日本舞踊等々、全体のストーリーの流れの中で、それぞれが素晴らしく輝いて深い感動を与えてくださいました。「ありがとうございました、ご苦労様でした」の言葉に尽きます。

 私は、小学校5年生(1956年)から高校2年生(1962年)までの間、毎週、飯田線の伊那から松本に当時2時間がかりで電車・汽車を乗り継いで通い、土曜日の夜は松本音楽院での合奏レッスン、その夜は毎回、鈴木先生のお宅に泊めていただき、日曜日朝、鎮一先生、お妹さんのひなおば様とご一緒に朝食をいただいた上で、朝一番で鎮一先生のレッスンを受けた日々を5年以上送らせていただきました。

 以下大変個人的な思い出で恐縮ですが、当時のことを思い出すままに書いてみましょう。
 懐かしい仲間の皆様、裕子ちゃん(鈴木裕子さん)、紘子ちゃん(正岡紘子さん)、とみこちゃん(志田とみこさん)、篤ちゃん(徳武篤さん)、尋子ちゃん(鳥羽尋子さん)、悦ちゃん(末廣悦子さん)、そして、私と一緒にヴァイオリンを習い始め、自宅練習ではいつも指導してくれた7歳年上の兄、英ちゃん(紿田英哉)との霧ヶ峰などの夏期学校・全国大会で鎮一先生とご一緒の合奏の数々や演奏を離れてのいろいろな遊び。鎮一先生の新しい松本の家(現在の鈴木鎮一記念館です!)ができ上がり、バトミントンができるコートまであって楽しめたこと。鎮一先生は大のたばこ好きでおられ、缶入りピース缶を常にお手元に置かれていて、今でいう大変なchain smokerでいらっしゃったこと(そのため?私も現在まで喫煙を楽しんでいます)。

 鎮一先生のレッスンのたびに、先生より「貴方の先生はどなたですか?」とのご質問あり。ベートーヴェンのヴァイオリンコンチェルトの時に、「ハイフェッツです」とお答えしたら、「グリュミオー先生に一度習えるといいですね」とのお言葉。当時の私の住む伊那の時計屋兼レコード屋さんでは、なかなかレコードが手に入らない中、演奏者の選択は二の次、まずは演奏曲のレコードの入手ができるかどうかが最優先でした。

 土曜日の夜、良く生徒のお姉さま方と一緒にご馳走になったカレーの美味しかったこと(材料がすべて細かく切られ、色も深い褐色の特製カレー)。日曜日の朝の先生とひなおば様との朝食、だるまストーブでコッペパンを焼いて、たっぷりバターやジャムを付けての食事。サラダや卵料理などもあって、当時としてはぜいたくな立派な朝食を楽しませていただいたものです。先生は、ハチミツの愛好家でいらっしゃって、朝食のつど、グラスに入ったハチミツの容器からそのままよくお飲みになっておられました。レッスンが終わり、帰宅の際は、ひなおば様が、必ずタクシーを呼んでくださり、松本駅までタクシーで。電話口で交換手に「九十一つ」と松本タクシーの電話番号を伝えておられる姿とお声が思い出されます。ずいぶん脱線してしまいました!

 最後になりましたが、今回の素晴らしい公演については、ぜひ日本のみならず、全世界のスズキの関係者、さらにはそれ以外の関係者にも広く鑑賞いただきたいと強く思いました。その意味で、今回の特別公演を収録されたDVDを、ぜひ早急に制作いただきたいと思います。私が所属するスズキ・メソードOBOG会でも全会員に配布できることを切望いたします。よろしくお願いいたします。 


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